高血圧
高血圧
診察室で測定した血圧が140/90mmHg以上、あるいは家庭で測定した血圧が135/85mmHgを越えて高くなると高血圧の診断になります。
年齢や病気により目標血圧は異なりますが、日本では目標血圧の基準として日本高血圧学会による「高血圧治療ガイドライン」が用いられています。ガイドラインも不変的なものではなく、2000年の発行から5年ごとに改訂が行われております。このことから高血圧がいかに重要な疾患であり、健康生活に影響を及ぼすものかが窺えると思います。現在日本には約4300万人前後の高血圧の方がおられると考えられております。その中で治療を受けて適切な血圧にコントロールされている患者様は約1200万人とされております。残りの方は自分が高血圧であることを知らない1400万人、知っていながら治療がなされていない450万人、治療していてもコントロールできていない1250万人です。生活習慣病の中でも高血圧は健康を害する大きな因子として認識されており、改善すべき状況が続いていると思います。また、年齢が高いほど高血圧である人の割合が高くなり、今後人口の高齢化に伴い高血圧患者数は増加することが予想されています。健康な生活を継続するために、まず日常的に血圧測定をしていただき、ご自身の状態を把握していただくことが重要と考えております。
高血圧はその原因により、本態性高血圧と二次性高血圧に分けられます。
1本態性高血圧の原因
一般的に、高血圧は本態性高血圧のことを指し、日本人の高血圧の大半はこちらに分類されます。本態性高血圧の原因ははっきりとわかっていませんが、塩分の過剰摂取、肥満、運動不足、ストレス、喫煙といった生活習慣、加齢、遺伝的な要因などが組み合わさって発生していると考えられております。その中でも特に重要なのが食塩の過剰摂取で、日本で高血圧が多く、脳卒中が多発した原因と考えられています。日本人の食塩摂取量は依然として多く、食塩摂取量を減らすことで血圧の水準を下げることができると考えられています。
また、近年では肥満に伴う高血圧も増加していると報告されています。
2二次性高血圧の原因
二次性高血圧とは、何らかの病気が原因となって起こる高血圧のことです。二次性高血圧の原因には、腎実質性高血圧、腎血管性高血圧、内分泌性高血圧(原発性アルドステロン症、クッシング症候群、褐色細胞腫など)、睡眠時無呼吸症候群、遺伝性高血圧、薬剤誘発性高血圧などがあります。
高血圧に特有の症状は、ほとんどありません。血圧が高度に上昇した場合、頭痛や吐き気といった症状を伴うことがあります。また、気づかないうちに進行し、脳卒中や心筋梗塞などの合併症を引き起こすこともあります。
血圧の測定方法には、診察室で測定する診察室血圧と、診察室以外の場所(持ち運びができる自動血圧計を用いたり、自宅などで測定したりする)で測定する診察室外血圧の2種類があります。高血圧ガイドラインでは家庭血圧の数値を診断の指標として用いています。診察室血圧と診察室外血圧に大きな差がある場合には、診察室外血圧を優先します。
高血圧と診断された患者様のうち、主に以下のような特徴がみられたら、二次性高血圧であるかどうかを確認するスクリーニングを行います。
主な検査としては、尿検査、血液検査による各種ホルモン、クレアチニン、電解質、腹部の超音波検査やCT検査などが挙げられます。
高血圧治療の目的は、高血圧が続くことによって起こる脳卒中・心筋梗塞などの合併症の発症、進行を防ぐことです。高血圧の治療は、生活習慣の改善と薬物治療の2つによって行われます。まずは、高血圧に関与している塩分の過剰摂取、肥満、運動不足、ストレス、喫煙など生活習慣を改善します。
1生活習慣の改善
生活習慣の改善では、以下のようなことが推奨されます。
上記の他には冬季などの寒い環境では血圧が上昇するため、十分な暖房や防寒が重要です。
また、心理的、社会的ストレスが高まると高血圧の発症が増加するため、しっかりとした休養や、ヨガなどのリフレッシュも効果があります。
2薬物治療
生活習慣の改善で血圧が下がらない場合、薬物治療を行います。薬物治療では、降圧薬と呼ばれる血圧を下げる薬を用います。様々な種類の降圧薬がありますが、病態によっては投与に注意が必要な場合がありますので、適切な降圧薬を選ぶことが重要です。一つの薬剤で効果が不十分な場合には、複数の降圧薬を組み合わせて使うことで目標血圧を達成します。
しかし、血圧はただ『さげればいい』だけではありません。例えば、降圧薬によって急激に血圧が低下したり、過度に血圧が低下した際にはふらつきなどの症状が出現することがあります。そのため、患者様それぞれの疾患や状態に合わせた血圧のコントロールが重要となります。
3原因となる病気の治療
二次性高血圧であった場合、その原因となる病気によって治療方法はさまざまです。病気の治療によって原因を取り除くことで、血圧が下がる場合もあります。たとえば、内分泌性高血圧は腎臓のそばにある副腎に腫瘍ができ、ホルモンが過剰に分泌されることで起こります。この場合は手術を行うことにより治癒を目指すことが可能です。
また、腎血管性高血圧症は腎動脈が狭くなり、腎臓へ行く血液が少なくなることで起こります。腎動脈が狭くなっている場合には、カテーテル治療で血管の狭くなった部分を広げることで、高血圧が改善されることもあります。