慢性腎臓病(CKD:Chronic Kidney Disease)
慢性腎臓病(CKD)とは、時間をかけて腎臓の働きが悪くなっていく腎臓病の総称です。日本の成人の8人に1人が慢性腎臓病といわれており、新たな国民病として注目されています。初期には自覚症状がありませんが、進行すると、食欲低下、倦怠感、むくみ(浮腫)、息切れなどの症状が出現してきます。これらの症状が自覚できるときにはかなり進行しているケースが多いとされています。慢性腎臓病は進行すると機能の回復が難しくなり、次第に病状が悪化して、最終的には人工透析が必要になってしまいます。しかし、早期に発見して治療を開始すれば、進行を抑えることができる病気です。健康診断でタンパク尿・血尿などの検尿異常や腎障害を指摘されたら、迷わず受診してください。
糸球体腎炎
腎臓の糸球体に炎症が起こり、タンパク尿や血尿が持続する病気を糸球体腎炎と呼びます。通常は無症状で、健康診断や学校検尿により尿所見異常(タンパク尿・血尿)で発見されることが多い疾患です。疾患や重症度にもよりますが、ステロイド剤や免疫抑制薬などを併用して治療します。早期発見と継続的なフォローアップが非常に重要な疾患です。
糖尿病性腎症
糖尿病三大合併症の一つです。糖尿病腎症の早期である第1期・第2期では自覚症状が乏しいため尿検査で診断します。第3期ではむくみなどの自覚症状が出現することがあります。第4期・第5期では腎機能が低下し、食欲不信、倦怠感、嘔吐などの自覚症状がでることがあります。第3期以降では進行の抑制はできますが、正常な状態に戻すことはできないため第2期の段階までに発見することが重要とされています。
高血圧
腎臓には血圧を正常範囲内に維持する機能があります。しかし腎臓に障害があると、この機能が適切に働かなくなるため、高血圧になりやすくなります。また高血圧が腎臓にダメージを与えることでさらに腎機能障害が進行するため、腎臓と血圧との間で悪循環が形成されてしまいます。腎臓疾患がない方でも高血圧を適切に治療しなければ、慢性腎臓病を発症し、自覚症状が乏しいまま腎障害が進行するリスクもあります。このように高血圧と腎臓には密接な関係があるため、腎臓病の治療では腎臓を保護しながら適切な血圧コントロールを行うことが重要とされています。
腎硬化症
高血圧が続くことで腎臓の血管が動脈硬化を起こし、腎機能障害が進行する病気です。初期の症状は、高血圧からくるめまい、頭痛などを生じることもありますが、多くは症状が出ないまま病気が進みます。健診などのタンパク尿で判明することもあります。腎硬化症の治療では血圧管理が大切です。毎日血圧を測定し日頃の状態を知っておきましょう。
腎性貧血
腎臓は赤血球を作る働きをするエリスロポエチンというホルモンを分泌しています。腎臓の機能が低下するとエリスロポエチンの分泌が減少し、赤血球を作る能力が低下して貧血になります。この貧血を腎性貧血といいます。鉄欠乏性貧血とは原因が違うため、治療方法も異なります。
急性腎障害
数時間から数日の間に急激に腎機能が低下する状態を急性腎障害といいます。症状としては、尿量減少やむくみ、息切れ、食欲低下、全身倦怠感などが現れます。原因としては、脱水や腎臓の炎症・尿細管細胞の障害などが挙げられます。尿路系の閉塞によるものもあります。慢性腎臓病に移行するケースもあり注意が必要です。
ネフローゼ症候群
尿にタンパクが大量に流れ出て血液中のタンパク量が低下し、全身にむくみを生じる腎臓病の総称です。原因は様々で糖尿病などの代謝異常や膠原病、感染症、血液疾患、悪性腫瘍など多くの疾患と関連性が指摘されています。
軽症のこともありますが、病態としては非常に重篤であり、腎機能障害や血栓・塞栓症、血液凝固機能異常などのリスクが高まると考えられています。早期の段階で専門医による診察が必要な疾患です。
腎不全
腎臓病が進行して、腎臓の働きが悪くなった状態をいいます。急激に腎臓の機能が低下する急性腎不全と、数ヵ月から数十年かけて腎臓の働きがゆっくり悪くなる慢性腎不全があります。
前述した急性腎障害、慢性腎臓病とほぼ同じ概念になります。以前はよく使われていた名称ですが、現在の医療ではほとんど使われなくなりました。
多発性のう胞腎
遺伝性の疾患で、のう胞(液体が溜まった袋)が両側の腎臓に多発します。それらが大きくなる過程で腎臓の正常組織が減少し、腎機能障害に至ることがあります。健診などで偶然発見されることも少なくありません。心臓弁膜症や脳動脈瘤などの合併リスクが高いことが知られており、適切な診断と早期の治療が求められます。
腎盂腎炎(じんうじんえん)
腎臓内の尿の通り道である腎盂(じんう)に、尿道から大腸菌などの細菌が侵入することで感染を起こします。発熱、悪寒、下腹部痛などの症状が出ます。抗生物質や抗菌薬で完治することがほとんどですが、入院が必要なこともあるので早期の治療が大切です。
女性は尿道長が短く、大腸菌などの細菌が侵入しやすいため、男性に比べ感染が起こりやすいとされています。
結石
結石のある部位によって腎臓結石、尿管結石、膀胱結石、尿道結石に分けられます。結石が腎臓内にある内は特に症状はありませんが、尿管にくるとわき腹や背中などに刺し込むような激痛が起こります。小さい結石であれば、薬剤を使い自然な排石を待つ保存療法が基本になります。大きな結石や、自然排石が難しいと考えられる場合には、体外衝撃波結石破砕手術(ESWL)やレーザー砕石器などを用いた内視鏡手術が行われます。この場合は治療ができる医療機関をご紹介いたします。結石は再発しやすいので、定期的に検査を受けることも大切です。